trend_2025

泡立つ琥珀の宝石
心ときめく麗しき
シャンパーニュを求めて

人びとの心を満たす美しき琥珀色の泡─シャンパーニュ。
自然の力と、時の流れ、人の手をかけることで生み出される至高の味わいは
つくり手の数だけその味わいもさまざま。
数あるシャンパーニュの中から自分好みの味わいと出逢うため
伊勢丹新宿店 「グランドカーヴ」ソムリエの宮沢典芳さんに最新トレンドを伺います。

この人に教わりました

宮沢典芳さん
伊勢丹新宿店 本館地下1階
「グランドカーヴ」ソムリエ
2002年より伊勢丹新宿店に勤務。1997年 田崎眞也氏主催「第1回コミ・ソムリエコンクール」最優秀賞。懐石料理店、フレンチレストランにてソムリエに従事。恵比寿「カーブ タイユバン」を経て現職。現在は「グランドカーヴ」での接客コンサルティング、ヴィンテージセラーを中心とした商品選定等を主に行う。2019年2月にコマンドリー デュ ソルト ブション シャンプノワ叙勲。

人の手と自然の力が融合して
生み出される美酒
「シャンパーニュ」の楽しみ方

宮沢さんから見て、シャンパーニュの最近のトレンドをどのように捉えていますか?。

ソムリエ  宮沢典芳さん

 2021年のヴィンテージは収穫量が少なく、入荷も減少傾向にあります。世間の状況も相まって、販売面でも若干の減少を感じているところです。

最近、エチケットにQRなどでシャンパーニュの情報開示など見かけるようになりましたが。

ソムリエ  宮沢典芳さん

 もともとレコルタン・マニピュランなどの小さな生産者から発信されていると思いますが、中身の透明性や情報開示が細かくされるようになって、大手もそれに追随する形でQRをつけたり、ロットナンバーをつけたりして中身はこれですよ、と表現するようになったのは、その流れかと思います。

シャンパーニュ ランソン
ブラック クリエイション NV

●モトックス
2023年には情報の透明性を体現する“クリエイション・シリーズ”がスタート。スタンダードキュヴェにもQRコードを通じて収穫年の情報や産地情報など、非常に細かい情報が表示。

最近、新しく注目されている地域はありますか?

ソムリエ  宮沢典芳さん

 勢いのある地域として感じるのは、ランスの南西エリアでしょうか。世代交代も進み、若い造り手たちが増えてきていますね。

サヴァール
ルーヴェルチュール
●フィラディス
モンターニュ・ド・ランス西側のエキュイユに所在する職人気質なワイナリー。2005年に家業を継いだ3代目フレデリックがドメーヌの指揮を取り品質が著しく向上。今やフランス国内外から多くの注目が集まる期待の星。

ソムリエ  宮沢典芳さん

 また、少し前になりますが、ランスの北西に位置するメルフィのシャルトーニュ・タイエも見逃せません。

シャルトーニュ・タイエ
キュヴェ・サンタンヌ
●フィラディス
かつての 「グラン・クリュ」を現代に復活させるシャンパーニュの新星。1983年生まれのメゾンの新しい時代を担うアレクサンドル・シャルトーニュ。探究心の塊のような彼には、世界中から熱い注目が注がれている。

ソムリエ  宮沢典芳さん

 その他、飛び地のコトー・デュ・ヴィトリアでは、ノエル初登場のシャンパーニュ・ロストも名を連ねていますね。

シャンパーニュ・ロスト
プレスティージュ・テロワール・ド・シャルドネ
●富士インダストリーズ
コート・デ・ブランから南東へ50km程の 「コトー・デュ・ヴィトリア」。他のシャンパーニュ産地からは、飛び地で、フランス国内でもまだあまり知られていない近年最も熱い視線が注がれている産地のひとつ。

ソムリエ  宮沢典芳さん

 今、シャンパーニュでは興味深い現象が起きています。小規模生産者、レコルタン・マニピュランの中で人気が高まり、供給量が需要に追いつかなくなったところが、スタンダードキュヴェには買いぶどうを混ぜ、上位クラスについてはパーセル名やヴィンテージを明記して差別化を図る、という動きがありますね。

レコルタン・マニピュランのネゴシアン化のような流れでしょうか。

ソムリエ  宮沢典芳さん

 そうですね。従来のフィロソフィーはそのままに、ネゴシアン・マニピュランになりました、という動きは確かにあります。また、レコルタンから生まれた流れとして、「単一品種、単一区画、単一ヴィンテージ」というスタイルが、ひとつのトレンドとして定着してきたように感じます。

シャンパーニュ ドゥーツ
オマージュ ア キュヴェ ウィリアム ドゥーツ “ミュルテ”
●センチュリートレーディングカンパニー
グラン・クリュ 「アイ」の単一畑、最優良区画の 「ミュルテ」。単一品種、単一区画、単一ヴィンテージで、生産量は僅か約6,000本。フレッシュでピュアな味わい。プレステージキュヴェの複雑さにエレガントな調和が魅力。

例えば、品種でも、主要三品種以外で、古代品種などで造られるシャンパーニュもありますね。

ソムリエ  宮沢典芳さん

 確かに、ひとつの切り口として、以前に比べると増えてきましたね。

バイ フェルナンド
ルスティカ
●センチュリートレーディングカンパニー
シャンパーニュで僅か3%の作付面積のピノ・ブランを使用したキュヴェ。父親から受け継いだメゾンをヴァネッサとグザヴィエ夫妻が現代的なデザインのボトル、ラベルで、伝統的なシャンパーニュに新しい風を吹き込んだメゾン。

ポール ダンジャン エ フィス
サン・シール
●ソムリエ
ピノ・ブラン100%のブラン・ド・ブラン。年間わずか10樽しか生産できない稀少品。シャンパーニュにしてはややグラマラスでリッチなスタイルに仕上がる傾向があるため、収穫を早めることでエレガントな味わいを表現。

ソムリエ  宮沢典芳さん

最近は、プレス機の進化により、以前よりもクリアなジュースが得られるようになり、酸化も抑えられるなど、機械設備の充実が味わいの変化に大きな影響を与えていると感じます。例えば、先ほどのランスの南西地区などでは、品種としてムニエが注目されています。従来、ムニエといえばボリューム感があって柔らかい果実感が特徴とされてきましたが、最近では引き締まったシャープなスタイルのものも登場し、こうしたスタイルの多様化の背景には、設備の進化も影響を与えているのではないかと考えています。

シャンパーニュも、さまざまな切り口の新たな表現が増えているのですね。

ソムリエ  宮沢典芳さん

  そうですね。あと、今、コトー・シャンプノワが増えているんです。これは今に始まったことではありませんが、ベレッシュなどが、元のプレスワインを試飲会などで飲ませるところから始まっていると思います。泡がなくても、こんなに美味しいワインなのだと皆が知ったことから、大手も目を向けるようになったのではないでしょうか。

パイパー・エドシック
オール・セリィ ブラン・ド・ノワール コトー・シャンプノワ アイ
●日本リカー
シェフ・ド・カーヴ エミリアン・ブティヤが、グラン・クリュに格付けされたアイ村から収穫したピノ・ノワールで、白ワインを醸造。コトー・シャンプノワの伝統の追求と新たな解釈を通じて造られたブラン・ド・ノワール。

ソムリエ  宮沢典芳さん

 もうひとつ、最近感じているのは、糖分の捉え方についてです。ピエール・ペテルスと会った際、「糖分が入っていないと長持ちしにくい。糖分が熟成にブレーキをかけてくれる」というような話があり、自分自身もテイスティングをしている中で、それを実感したことがありますね。

そういう意味では、ナチュールは愉しめる時期を見極めることも大切ですね。

ソムリエ  宮沢典芳さん

その通りです。ある程度若いうちに、フレッシュな状態で味わうのがおすすめですね。また、製法でいいますと、ノン・マロラクティックでシャープな酸を残すことで熟成に耐えうる、そのようなテクニックで表現するシャンパーニュもあると思います。

アルフレッド・グラシアン
ブリュット・ナチュール
●ワイン・トゥ・スタイル
ドサージュ0g/L。ヴァン・ド・レゼルヴ=約40%。ノン・ドザージュで、活き活きとしたフレッシュさ、ワイン本来の旨味と品質の高さを表現。20〜23℃にて約15日間、旧樽を使って発酵、その後6ヶ月間シュール・リーの状態で樽に。バトナージュ、マロラクティック発酵なし。

ソムリエ  宮沢典芳さん

 その他、ノエル・ア・ラ・モードで注目の新世代ということでは、2016年に引退したマリー・ノエルのフィロソフィーを受け継いでいると感じられるヴァンサン・ベルナールも、世代交代という観点から要チェックですね。

ヴァンサン ヴェルナール
ブラン ド ブラン ミレジム2020
●センチュリートレーディングカンパニー
マリー・ノエルのアンボネ村のグラン・クリュの畑を借りて、’20年から彼女の哲学、エスプリを享受。シャンパーニュの醸造、製法、ノウハウを学び、醸造設備、セラーを間借りして毎年、マリー・ノエルと試飲してアッサンブラージュを実施。

ソムリエ  宮沢典芳さん

そして、最先端のひとつという意味で、ぜひ味わっていただきたいのが、セドリック・ブシャール(ローズ・ド・ジャンヌ)ですね。

ローズ ド ジャンヌ
コート ド ヴァル ド ヴィレンヌ
●センチュリートレーディングカンパニー
ノエル・ア・ラ・モードでは、11月8日・9日・10日の土日月曜日限定ISETAN パール デ セレクシオンで、バイザグラスで愉しめる予定。樹齢40年以上のピノ・ノワールから造られるブラン・ド・ノワール。

ノエル・ア・ラ・モードのおすすめの愉しみ方を教えてください。

ソムリエ  宮沢典芳さん

 普段から気になっていたシャンパーニュや、新たな出合いを愉しむのもよいのですが、今回はマリアージュを愉しめるBARも増えたので、まずは食事と合わせて愉しむという観点から入っていただくのもよいかもしれませんね。

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